LONCO JOURNAL ロンコ・ジャーナル

PHILOSOPHY

  • 2021.03.01
  • 『新型コロナウイルスの日常化後の対応』

1.COVID19の日常化への第一歩

(1)ワクチンの開発と接種
2月中旬から、ワクチンの接種がようやく日本でも始まり、ポストコロナが具体的にイメージできるようになってきたのではないだろうか。
ただ、ワクチン接種については過去の副作用被害に対する当時の政府の対応のまずさから、製薬会社も国民もあまり積極的になれない日本の現実もある。

しかしながら、いつまでも現在(2021年2月20日時点)も続く緊急事態宣言(一部地域)下での生活や勤務は、多くの人々の多大なストレスとなっている。
特に外食産業や旅行産業に関わる方々にとっては、生活に関わる事態となっており、ワクチンの確保と円滑な接種環境の整備が望まれており、 すぐに以前と一緒の環境というわけにはいかないまでも、もう少し経済活動がしやすい環境を整えるのは誰もが期待していることだと思う。
(2)ソーシャルディスタンス維持の前提
ワクチンが開発され、接種が始まったからといって、これまでの日常が戻るわけではない。
コロナウイルスは根絶することがないため、後遺症の可能性を考慮すると、罹患しないに越したことはない。
となれば、やはり以前と比較すれば、移動の制限や生活習慣の変化は受け入れざるを得ないと同時に、これまでのビジネス常識にも変化が出てきている。
特にこれまでは、対面でのビジネスが前提であった案件が、IT技術の発達に因る部分も大きいが、Webによる打合せでも充分であることが認知され、 今後は対面とWebの使い分けがビジネスの優劣を左右する要素の一つとなるのかもしれない。

2.新型コロナウイルスの日常化を見据えて対応すべきこと

(1)ソーシャルディスタンス維持への対応
今後人材を集めやすくするためには、できるだけ接触をしないで仕事のできる環境を作ることは、逆説的なことにはなるが重要な要素となる。
そのために、物流業界ではロボット化への対応や検討が急激に熱を帯びつつある。
現実的には多くの物流現場にロボットの導入が進んでくることはかなり先になるが、先進的な企業では導入に向けての対応が進んでいる。
そのロボット化に向けて課題が出てきているのは、『ロボットの導入を決めたとしても、そのロボットを既存システムと連動化するための制御系SEが不足している』ということである。

ロボット化の条件には、『サービスレベル定義化』・『業務の標準化』・『業務の見える化』等が必要となってくるが、すでにロボット化を推進しようとしている企業においては、 『導入に当たっての技術者不足』が顕在化しつつある。
新しい技術であるために、SEの育成にも時間が掛かることになるため、ロボット導入の拡大スピードの上昇に伴うSEの確保問題が、 次の課題とならないように先を見据えた検討が必要となってきている。
(2)サービスレベルの是正とサービス提供の多様化への対応
新型コロナウイルスだけでの影響ではないものの、この1~2年の間で、物流とくに配送サービスは劇的に変化してきたと言えるのではないだろうか。
2000年にAmazonが日本に進出してきた結果、『配送サービスは無料』ということが特にネット通販においては急速にデファクトスタンダード化し、EC市場は経済成長が滞る日本において、数少ない成長市場となってきた。
その結果、宅配の現場は悲鳴を上げ、2017年にはドライバー不足が社会的に認知されるように至った。

長い間、配送サービスは無料であると認知されてきたが、ウーバーイーツの出現により、物流サービスに対する意識の変化と提供サービスの多様化が見られるようになったと考えている。
新型コロナウイルスによって、移動が制限されるようになった結果、ウーバーイーツは時流にも乗ることになり、自宅に居ながらでも好きなものを食べたいときには、 商品代金とは別に『届けてもらうサービスに対して対価を支払う』ことが認知されるようになってきた。
まだまだこの認識が一般化されたとは言えないものの、ネット通販に端を発したと感じられる『配送料は無料』という認識は、 サービスの担い手としての物流現場の困窮の実態が明らかになるとともに変化してきていると言える。

物流サービスの高度化とコスト低減の両立は、とても難易度の高い取り組みであり、継続的な改善はし続けなければならないものの、 固定費比率の高い物流業においては、取り組みに限界があることも事実である。
となれば、一度『これまでのサービスレベルが本当に妥当なものなのかどうか?』『サービス提供の継続性は可能なのかどうか』を 今一度検証しておかなければ、サービス提供の担い手がいなくなる可能性がある。
また物流事業者側もウーバーイーツの仕組みのように、担い手の多様性がDXによって容易になりつつあることを認識し、脅威として検証する時期に来ているのではないだろうか。
石 橋 岳 人

石橋 岳人(いしばし たけと)

神奈川大学経済学部経済学科卒。大学卒業後、株式会社船井総合研究所入社、流通業を中心としたコンサルティング活動・指導業務を経て、1998年 物流コンサルティング会社入社。同社取締役を経て、2005年1月、ロジスティクス・サポート&パートナーズ常務取締役に就任。 物流ABCを活用した利益の出せる得意先・作業管理の仕組みづくりや、物流企業の提案営業指導を得意としている。また、「見える化」手法を活用した“人時生産性”・“物流品質”・“モチベーション”に関する改善指導は好評を博している。