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新型コロナの物流への影響と今後の展開

  • 2020.10
  • 『新型コロナの物流への影響と今後の展開』

1.世界で起きたこと

(1)終息の見えない状況が続く
中国の武漢で発生したと言われ、世界の感染者数は約4,000万人で、死亡者数は111万人を超えている(10/19現在)。 アメリカの死亡者数は約22万人で、大変な犠牲を払ったベトナム戦争による米軍の死者数(5.8万人)を大きく超えている。 しかしながら、感染者数の発生が止まることはないものの、東アジア諸国での感染者・死亡者数は、世界と比較すると少ない傾向が出ている。

人口100万人あたりの新型コロナウィルス死者数の推移

(2)分かってきたこと
SARSやMARSよりも感染率は高いが、致死率は低いことが見えてきて、飛沫感染、接触感染が要因だとされてきたが、空気感染の可能性についても強く言及されるようになってきた。 医療的見地からは、『ウイルスは絶滅するものではないと考えるべきであり、「普通の風邪」にすることが、現実劇な目標ではないか』と考えられているようである。

2.新型コロナウイルスがロジスティクスに与えた影響

(1)社会活動の変化
前回お伝えした消えたトイレットペーパーは、有事に起こりうるロジスティクスへの影響の象徴的な現象である。また、業界による物量増減の偏り(例えば食品業界でいえば、小売店と外食店の格差など)や立地面でいえば、都心店売上の大幅な現象である。 国内だけではなく、国家間の物流も滞留し、世界のサプライチェーンが大きく変化する可能性(物理的に長いサプライチェーンへの見直し)が出てきている。
(2)物流現場への影響
先程の食品業界の偏りのように、できるだけ外に出る行動を控えるようになりテレワークが劇的に定着しつつあるものの、私たち現場で働く業種については、職場まで移動し、活動せざるを得ない状況にあり、一部の現場では現場作業員が出社を拒否するような動きも出てきている。 動かさざるを得ない現場では、感染・クラスター対策として飛沫感染対策(三密回避、マスク着用・ソーシャルディスタンスの維持)や接触感染対策(手洗い、アルコール消毒、共用備品の専用化)、従業員の体調管理(検温等による異常検知時での接触防止(出勤させない)策)を実施し、普段の生活が維持できる努力を続けている。

物流企業の対応例

3.With コロナ時代のロジスティクス・物流の在り方

(1)現在検討中、あるいはこれから検討されること
①ソーシャルディスタンスの維持
物流現場は労働集約型業務の典型例であるが、この業態から少しでも脱却できるような工夫・知恵の出し方が求められてくると考える。 そのために、まずは管理者や事務、システム担当者のリモートワーク・テレワークを常態化できるように考えていくことになる。 現場レベルでは、作業の非接触化をどのように実現するか?がテーマとなる。 近年進んできたように感じられる自動化、ロボット化について、大手だけではなく中小レベルでも導入を検討していくことと、日本ではあまり導入されていない『ゾーンピッキング』手法により、作業員同士の接触を減らす仕組みも考えていくべきである。 また、自動化を阻んでいる要因のひとつは『バラ出荷対応』でもあり、物流サービスの在り方について、再考する良い機会と捉え、『持続可能なロジスティクス・システム』を構築する必要がある。 そのためにも、リードタイムの延長(作業量の平準化)や、出荷・輸送単位の大ロット化、配送頻度の低減、イレギュラーの低減の実現を荷主企業・物流企業の双方が本気で取り組んでいくべきである。
②今後の課題
サプライチェーン全体での課題としては、BCP視点でのロジスティクスや物流を考えていくこと、そのためにロジスティクスサービスの見直しやセンターの分散化が行われると考えている。 また、国家の危機管理としてのサプライチェーンの見直し(工場の国内回帰や海外での分散化)も一部の動きとしては見られる。 ロジスティクス、物流での課題としては、荷主・荷主業種の分散化を本格化する必要がある。私は以前から物流企業は、最大荷主の構成比を10%以上にしないことを推奨してきているが、特定荷主や業種に偏りがあると、効率は良いが今回のような有事が発生すると、大きなリスクとなっている。 また、今後は人口の地域分散化が進むとすれば、優位的センター立地も変化する可能性を秘めている。 そして現場の運営においては、リモートワーク・テレワークが拡大していくなかで、どのようにしてコミュニケーションを維持し、強化できるのか?という仕掛け・仕組みづくりが、自動化の実現が困難な現場における最も重要な課題のひとつである。
石 橋 岳 人

石橋 岳人(いしばし たけと)

神奈川大学経済学部経済学科卒。大学卒業後、株式会社船井総合研究所入社、流通業を中心としたコンサルティング活動・指導業務を経て、1998年 物流コンサルティング会社入社。同社取締役を経て、2005年1月、ロジスティクス・サポート&パートナーズ常務取締役に就任。 物流ABCを活用した利益の出せる得意先・作業管理の仕組みづくりや、物流企業の提案営業指導を得意としている。また、「見える化」手法を活用した“人時生産性”・“物流品質”・“モチベーション”に関する改善指導は好評を博している。