LONCO JOURNAL ロンコ・ジャーナル

PHILOSOPHY

  • 2021.7.7
  • 『労働力不足の解消とカーボンフリー実現への貢献に向けて』

沖電気工業株式会社(以降、OKI)の丹野と申します。
この度、ロンコ・ジャーナルへ寄稿させて頂く機会をくださったこと、誠にありがとうございます。
ここでは、ロンコ・ジャパン社と共に取り組んでいる活動についてご紹介させて頂きます。

OKIが「物流」分野で目指すビジョン

はじめに、物流分野におけるOKIの取り組みについて簡単にご紹介させて頂きます。OKIは、OKIのイノベーション・マネジメントシステム(IMS)を「Yume Pro(注1)」と命名し、新規事業を創出する分野の一つとして「物流」を掲げて日々活動しています。OKIが物流分野で目指すゴールは、サプライチェーン構築の完全自動化です。現在、サプライチェーンは、物流業務に従事される方の経験に基づく知識や能力によって構築されています。このサプライチェーン構築の完全自動化を達成するには、サプライチェーンに関わる多くのステークホルダーの情報を接続し、サプライチェーンの始点から終点までを結ぶ最適解を導出する仕組みが必要と考えています。しかしそれは、一足飛びに実現できることではありません。そこでOKIは、物流業界の現場の課題に寄り添い、一つ一つを解決しながら情報基盤を整え徐々に範囲を広げて完全自動化を実現して行こうと考えています。

図1

OKIがロンコ・ジャパン社と共に目指す姿

OKIとロンコ・ジャパン社は、OKIの取り組みを知ってくださったロンコ・ジャパン社からのお声がけで出会いました。当初OKIは、荷主企業の社内にある出荷情報と物流企業の配送情報とを自動的に突き合わせて出荷管理を容易化するLogiConnect®というソリューションを提案しながら、現場の課題探しに取り組んでいました。そして2020年の夏、ロンコ・ジャパン社のご厚意で物流倉庫の現場を視察させていただき、議論を重ね、解決すべき課題が配送計画の立案作業にあるという結論に至りました。
OKIは、ルート配送事業における配送計画の立案作業を自動化することで作業効率を向上させ、かつ非属人的に配送ルートを導出することで配送ルートの品質を均一化し、さらには走行距離を削減できるアルゴリズムを作ることに成功し、その効果をロンコ・ジャパン社と共に検証しました。 今後、OKIとロンコ・ジャパン社は、このアルゴリズムを搭載した配送ルートの最適化ソリューションをリリースし、配送計画の立案業務がベテランの従業員に集中する負担を軽減するとともに、多くの物流企業の配送コスト、さらにはCO2排出量を削減してカーボンフリーな社会の実現に貢献することを目指します。

共創の背景(社会の課題)

OKIのYume Proは、新規事業でSDGsの達成に貢献することを方針としています。ロンコ・ジャパン社との取り組みでは、特に以下のSDGsに重点を置いています。

SDGs 8:働きがいも経済成長も

ターゲット8.2:高付加価値セクターや労働集約型セクターに重点を置くことなどにより、多様化、技術向上及びイノベーションを通じた
高いレベルの経済生産性を達成する。

SDGs 9:産業と技術革新の基盤をつくろう

ターゲット9.4:2030年までに、資源利用効率の向上とクリーン技術及び環境に配慮した技術・産業プロセスの導入拡大を通じた インフラ改良や産業改善により、持続可能性を向上させる。全ての国々は各国の能力に応じた取組を行う。

SDGs 13:気候変動に具体的な対策を

ターゲット13.2:気候変動対策を国別の政策、戦略及び計画に盛り込む。

高齢化の先進国である日本においてこれらの目標に貢献するため、配送計画を立案する作業の自動化と配送ルートの最適化により労働の効率を高めて労働力不足の改善と輸送コストの削減を実現し、安価で便利な輸送インフラの構築に貢献するとともに、CO2排出量を削減しようと考えました。そしてこのことは、物流業界の現場における直近の課題解決にもつながると意気投合し共創検討を開始しました。

OKIの最適化技術

OKIは、2019年、プリンターの製造現場に量子コンピューター(注2)を適用して、製造ラインにおける半導体製造装置の最適配置を導出し、作業員の移動距離を平均28%短縮する結果を得ることに成功しました。量子コンピューターは、従来のコンピューターに比べ圧倒的な計算能力を持つと期待されており、世界中で開発が活発に行われています。日本でも量子コンピューターを含む量子技術を重要な基盤技術として位置づけ、国をあげて研究開発を推進しています。OKIは、量子コンピューター技術の有用性が幅広く認知され、当たり前のように社会実装される日が遠からず到来すると予想し、その応用技術の研究開発を行っています。
こうした研究開発活動で培った最適化ノウハウを活かし、配送要件(配送先と要求荷物量、車両数など)を満たしつつ最適な配送ルートを自動導出する「コスト最小化型配送ルート最適化アルゴリズム」を開発しました。このアルゴリズムは、演算量が膨大で実用化のハードルが高かった1店舗に複数車輌で荷物を分割して配送する条件でのルート計算を、従来のコンピューターで実現する事を可能にしました。
このアルゴリズムの効果を検証するため、OKIとロンコ・ジャパン社は、2021年2月に共同で実証実験を実施しました。実際の配送業務において、配送要件の確定から配送開始までの限られた時間内にこのアルゴリズムを用いて配送計画を策定し、実際にその通りの配送を行い、対象とした配送エリアの1日の総走行距離の約8%にあたる約300kmを削減することに成功しました。また、この結果を基に1年間のCO2排出削減量を求めると、約440kgとなります。

最後に

コロナ禍において急増している物流の需要に応えつつ、少子高齢化を背景に深刻化する労働力不足問題の解決が求められています。このように複雑化していく社会課題は、一社単独ではとうてい解決できなくなってきています。OKIは、SDGsへの貢献に自社の技術を活かすため、物流関連企業様とのオープンイノベーションでさらに便利で利用しやすく人と環境にやさしい物流の実現に貢献し、社会の大丈夫をつくっていきたいと考えています。このような機会をくださったロンコ・ジャパン社に感謝を申し上げると共に、この文を読んでくださった企業様とも共創の機会を持てることを期待し、結びの言葉とさせていただきます。ありがとうございました。


注1:Yume Proは、OKIの登録商標です。
注2:量子コンピューター
量子力学的な状態(0と1の重ね合わせ)を情報処理の単位(量子ビット)として利用するコンピューターの総称。汎用的な演算が可能なゲート型と、組み合わせ最適化問題に特化したアニーリング型に分類できる。

【沖電気工業株式会社】
イノベーション推進センター
ビジネス推進部
担当部長 丹野 洋祐 様